EMAT(Electromagnetic asouctic transducer:電磁超音波センサ)



名称

特徴

用途

横波垂直入射型EMAT

変換効率(感度)が高く,広い周波数帯域(0.1~20MHz)をもつ.幅広い用途に使用できる.

金属内の応力測定,新幹線レールの軸力測定,ボルトの軸力測定,結晶粒径測定,疲労・クリープ損傷評価など

縦波横波垂直入射型EMAT

縦波と2つの横波を同時に送信・受信できる.

金属薄板の応力分布測定

PPM型表面SH波EMAT

比較的高い効率で表面SH波を送受信できるが,基本モードの周波数は1MHz以下.

応力測定,探傷,r値測定

磁わい型表面SH波EMAT

高い周波数(~5MHz)の表面SH波を送受信できるが,厚板(>2mm)では著しく感度が低下する

探傷,r値測定

軸対称SH波EMAT

円柱・円管形状の部材の表面を伝ぱする軸対称SHを送受信する.モードによって浸透深さが異なることを利用し,材質の半径方向分布を評価できる.

疲労・クリープ余寿命評価,表面硬化層深さの測定

パイプ腐食探傷用SH波EMAT

車輪を持ち,パイプ内側を軸方向走行しながら円周方向にSH波板波を送信し,外側表面の腐食を検出する.

ガス管腐食診断

軟鋼ワイヤー探傷用縦波EMAT

鋼ワイヤーの長手方向に縦波を励起する.100m近く伝ぱさせることも可能.

ワイヤーのロングレンジ探傷

線焦点型EMAT

平行部間隔が徐々に変化する蛇行コイルによって横波を材料内部の焦線上に集中させる.50μm深さほどのき裂も検出できる.

微小き裂探傷


横波垂直入射型EMAT

2つの直方体形の永久磁石と渦巻きコイルから構成されます.試料に近づけてコイルに交流電流を流すと,試料表面に垂直方向に横波が発生します.横波の偏向方向(振動方向)は渦巻きコイルの長手方向に垂直な方向で,横波の周波数は交流電流の周波数と等しくなります.送信メカニズムの逆過程により同じ偏向方向の横波を受信することができます.周波数帯域は渦巻きコイルの巻数にも依存しますが,0.1MHzから20MHzと広範囲です.試料がアルミニウムや銅などの非磁性体のときは,ローレンツ力によって横波が発生しますが,鋼やニッケルのような強磁性体のときは磁歪力によって横波が発生します.


縦波横波垂直入射型EMAT

1つの円柱形の永久磁石と円形渦巻きコイルから構成されます.試料に近づけてコイルに交流電流を流すと,試料表面に垂直方向に縦波と横波が発生します.横波の偏向方向(振動方向)は円形渦巻きコイルの半径方向で,縦波と横波の周波数は交流電流の周波数と等しくなります.送信メカニズムの逆過程により同じ偏向方向の横波と縦波を受信することができます.周波数帯域は渦巻きコイルの巻数にも依存するが,0.1MHzから20MHzと広範囲です.試料がアルミニウムや銅などの非磁性体のときは,ローレンツ力によって横波が発生しますが,鋼やニッケルのような強磁性体のときは磁歪力によって横波が発生します.磁歪力では縦波は発生しにくいため,強磁性体に対しては横波だけを送受信する場合が多くなります.縦波は磁石の外側で,磁石の中心近傍で発生します.


PPM型表面SH波EMAT

渦巻きコイルの上に,薄い永久磁石を磁極方向が交互に異なるように多数並べたEMAT.永久磁石のNSNSの周期と同じ周期の表面SH波が発生します(つまり,表面SH波の波長は永久磁石の厚さの2倍).永久磁石が薄いほど,高周波数の表面SH波を送信できますが,薄すぎる永久磁石は磁力も弱くなり,実際,1mm以下の薄さの永久磁石は使用できません.


磁わい型表面SH波EMAT

直線部が等間隔の蛇行コイルを試料面におき,コイルの直線部と平行に磁場をかけることで,磁歪効果によって表面SH波を送受信できます.表面SH波の波長は,蛇行コイルの直線部間隔の2倍であり,より密な蛇行コイルを制作することで,高周波の表面SH波を励起することができます.ただし,磁歪効果を利用するため,試料が強磁性体であることが必要.磁歪力は試料の板厚の増加とともに著しく低下するので,このEMATは厚板には適用できません.


軸対称SH波EMAT

軸対称SH波とは,円柱あるいは円管形状の試料の表面を,軸方向に振動しながら周方向に伝ぱする表面SH波のことをいいます.これは,ソレノイドコイルなどで試料を軸方向に磁化した状態で,試料表面に巻いた蛇行コイルに交流電流を流すことによって磁歪効果を通してて発生させることができます.軸対称SH波は,周方向にぐるぐる何周も伝ぱするため,波長の整数倍が円周と等しくなったとき,共鳴を起こす.さらに短い波長でも共鳴を起こすことができ,共鳴のモードは無限に存在します.一番低いモードは,試料表面近傍だけを伝ぱします.共鳴の次数が高くなるほど伝ぱ領域は内部に浸透していきます.この性質を利用して,半径方向の材質変化を非破壊的に評価することができます.


パイプ腐食探傷用SH波EMAT

PPM-EMATに車輪をつけ,パイプの内側を軸方向に移動しながら周方向にSH波板波を送信します.SH波は一周して同じEMATで受信されます.パイプ外側に腐食による減肉部分が存在する場合,一周して戻ってきたSH板波の振幅と位相が変化します.この性質を利用してパイプの腐食探傷を行うことができます.


軟鋼ワイヤー探傷用縦波EMAT

ソレノイドコイル内に鋼棒を通し,軸方向に磁場を与えた状態でソレノイドコイルにパルス電流を流すと,磁歪効果によって棒や管に沿って伝ぱする縦波が発生します.途中に亀裂や腐食減肉が存在する場合,そこからの反射エコーが受信できます.縦波はほとんど減衰しないで伝ぱするため,100mもの長距離を伝ぱさせることができます.


線焦点型EMAT

蛇行コイルの上に永久磁石を一つのせて蛇行コイルに交流電流を流すと,SV波と呼ばれる横波が試料内部に斜め方向に放射されます.放射される角度は蛇行コイルの直線部間隔に依存するため,この間隔を徐々に変えてやることで,一線上にSV波を集中させることができます.これが線焦点型EMATの原理です.焦線でのエネルギの集中は微小き裂の探傷に効果的で,50μmほどの深さのノッチからのエコーも捕らえることができます.