◆2023.2.16-17 Munich Amyloid Symposiumに参加しました!◆

2023年2月16-17日にドイツのMunichで行われたMunich Amyloid Symposiumに参加するためにドイツへ渡航しました。荻研からは荻先生・中島・M1の太田君が参加してくれました。その様子を太田君からお届けさせてもらいます!



霧のMunich

 M1太田です。今回が初めての海外でした。世界最前線で活躍する研究者の話を聞いて感じたこと、異文化交流を通して感動したことなどを旅のレポートを交えながらお伝えしたいと思います。

1日目。羽田空港からミュンヘン空港へはロシア領空を迂回するために、羽田空港から最初北東へ向かって飛行し、ベーリング海を経由して北極上空を飛ぶ飛行ルートでした。14時間という気の遠くなるような長い時間を経て現地時刻18時ごろにミュンヘンに到着。この時ミュンヘンは深い霧に包まれていました。空港では後藤先生の友人でもあるミュンヘン工科大学(Techniche Universität München: TUM)のProf. Bernd Reifが迎えに来てくださいました。Berndさんの車に乗って早速ミュンヘン工科大学ガーヒングキャンパス内にあるホテルへ向かいます。夜と霧のせいで風景は全く見えませんでしたが、Berndさんも周りを走っている車もとにかくものすごい速さで飛ばします。到着して数十分で早速ドイツと日本の文化の違いを体感できるほどのスピード感です。


左上:霜が降りたTUMキャンパス。右上:数学科・コンピュータサイエンス科の建物内にある巨大な滑り台。とにかく速い。左下:機械工学科。写真中央に機械工学らしく飛行機の模型がぶら下がっています。右下:空を舞う鳥のオブジェ。斜めから見ると白枠で囲んだ写真のように何かは分かりませんが、真下から見ると鳥が飛んでいるように見えます。

2日目。午前は同じくTUMのProf. Johannes Buchnerさんがキャンパス内を案内してくださいました。非常にいい天気でしたが気温は低く、学内の木や草には霜が降りていました。各研究センターや各専攻の建物のみならず、学内にある地下鉄から学生や先生が利用する食堂など詳しく案内してくださいました。案内してもらい感じたのは、勉強とは関係ないアートやギミックが妙に多いということでした。一番は何といっても数学科の校舎内にある4階から1階まで繋がる巨大な滑り台です。その大きさと角度のなんたるや。1階にあった下に敷くためのマットを持って階段で上がり、先生たちに見守られながら滑りました。中は真っ暗で内臓がふわっと浮く感覚を感じるほどのスピードです。3秒くらいで1階に到着。この巨大な滑り台を果たしてTUMの学生はどんな風に使っているのでしょうか。4階から急いで帰宅するときに便利ですね。実は建設費の2%をアートに充てなければならないようで、ほかにも機械工学科には飛行機の模型があったり、見る角度によって動物の姿に見えるオブジェなど、楽しいアートが随所に散りばめられています。単なる勉強するだけの場所ではなく、学生やキャンパスを訪問する人が楽しめる遊び心に溢れたキャンパスでした。

2日目午後と3日目の午前はアミロイドのシンポジウムでした。世界の最前線で活躍されているアミロイドの研究者らそれぞれ20分間研究の紹介をしてくださいました。私の研究では工学的な視点からアミロイドの形成反応を考察する研究を行っています。同じアミロイドでもNMR,シミュレーション、Cryo-電顕といった様々な手法を用いて反応過程やアミロイドの形態の観察、生体因子による効果の調査など色々な角度からその現象を解き明かそうとする世界最前線の研究に触れることができました。


シンポジウム全体の集合写真。アミロイドの世界第一線の研究者ばかりだ。

特に感じるものがあったのは、普段日本語で研究の話をしている先生方が英語で自身の研究内容について紹介している姿でした。自身の研究を英語で紹介し,学生やその分野一流の先生方と英語で積極的に議論をしていましたが,会場に英語が母国語の人は恐らく半分もいなかったと思います。そんな中で、国籍が全く違う人たちが同じアミロイドという同じ研究分野を世界共通言語である英語を使って議論している場面を目の当りにして、英語の重要さを改めて再認識しました。英語ができなければ自分の研究は日本語がわかる人にしか知ってもらうことができません。逆に言うと研究に関する話を英語で議論できるということは、活躍できるフィールドが日本から世界へ広がり,またこんな風に世界中の人に自分の研究をアピールすることができる、ということをこの場で感じました。同時にアミロイドという複雑な現象をそれぞれが違った視点から紐解いていく楽しさを感じることができました。私もいつかこのコミュニティで自身の研究を英語でアピールできるように研究に励みたいと強く思います。


左:みんなでピースサイン。一番左のWunderlichが撮影後”It’s funny”と笑っていたのが印象的でした。右:キャンパスから南西方角の夕焼け。燃えるような色をしていました。

シンポジウムの合間には何度かコーヒーブレイクの時間があり、お菓子を食べながら現地の学生と交流する機会がありました。英語だけでコミュニケーションをとらなければならない環境は初めてで本当に緊張しました。初回は少々出遅れてしまいましたが、学生同士で話している輪の中に勇気を持って入ってみます。こんにちは、日本から来ました、よかったらお話しがしたいです。すると学生らは本当にニコニコの表情で「Sure!」と快く迎えてくれました。ドイツでは既にほとんどの人がマスクをしていないため、相手の表情をしっかりと見ることができます。しかし、いざ英語で話をしようとすると予想以上に言葉が出てこず、言いたいことが言えない場面ばかりでした。当たり前ですが言葉に詰まっても日本語が通じる学生さんはいません。なんとか簡単な英語やジェスチャーなどで話したい事を3割くらいは伝えられたかもしれません。しかし彼らは会話の終始ニコニコして話を私の話を最後まで聞いてくれました。私が「英会話は経験がなくて苦手だけど、たくさん話がしたい」と伝えると、「なんの問題もない。私もあなたの伝えたいことを理解して話がしたい」と言ってくれた時は本当にうれしかったです。実際にその通りで、私が相手の英語が聞き取れなかったときは分かりやすい英語で言い直してくれ、私の拙い英語でも終始ニコニコしながら話を聞いてくれました。


大好きなBoltzmannの式と2Sで嬉しそうな太田君(中島)

また、交流していく中で様々な日本とドイツの文化の違いを知ることができました。特に印象的だったのは日本の「写真を撮るときの文化」です。学生さんから日本人が写真を撮るとき取るピースサインってなんだ?という質問がありました。この文化は日本独特のものでドイツの方から見ると何とも面白く映るようで、「アジアの人はみんなするの?」「ピースは何を表現してるの?」とかなり話が盛り上がりました。元々日本独自の文化であることは知っていましたが、実際に海外の方から指摘されると確かに不思議な文化であることを再認識させられます。私もその由来や意味を知らなかったため、「由来はわからないけど楽しい気持ちを表現している」とお茶を濁すような回答となりました。実際にピースサインをするときは楽しい場面なので、多分嘘ではないです。ここまで話が盛り上がったら実際にやってもらわないといけません。実際に撮ってみようとお願いしてお話ししていたみんなで日本式で写真を撮りました。他にはドイツおすすめのお土産や観光地の話、日本とドイツにおけるPhDの違い、お互いの研究の話などいろんなことを話しました。私が日本の学生だろうと関係なしにとにかくたくさんお話しをしてくれ、一人日本人という疎外感を全く感じさせないほど親切な方ばかりでした。


荻先生に、「あの氷は分厚いはずだから、上を走れるはず。」と言われましたが、リスクとリターンが見合わず、挑戦はしませんでした。(中島)

交流する前の緊張は英語が通じないせいでスムーズなコミュニケーションが取れなかったらどうしようという不安からくるものでした。しかし親切な学生さんたちと交流して感じたのは、完璧な文法の英語を話すことが大切なのではなく、積極的に交流しようとすること自体が一番大切なことだということです。なにより拙い英語でも相手は私の言いたいことを理解しようとし楽しく会話をしてくれ、異文化交流の楽しさを肌で感じることができました。また同時に、円滑なコミュニケーションを取れるように英語をもっと勉強したい、思えるいい刺激となったのも間違いありません。これまで試験をパスするためだけとしか考えてなかった英語が、世界の人とコミュニケーションを取るために勉強したいと思えたのは初めてでした。コミュニケーションのツールとしての勉強をこれから頑張りたいと思います。

また、滞在中何度も感じたことですが、ドイツの夕日はとても赤いです。偶然夕焼けがきれいな週に滞在していたのでしょうか。その疑問は翌日解消されます。研究打ち合わせの帰りの夕方、車内で移動中にたまたま後藤先生も同じことをおっしゃっており、その理由についてもご説明されました。ドイツの夕焼けを赤く感じるのは「周りに山がないから」です。地平線に近いほど太陽光に含まれる青い光は大気中で散乱され、赤い光だけが残ります。周りに山がないので地平線に沈む太陽を見ることができ、ドイツの夕日は赤いと感じる、ということでした。文化とは違いますが、地形の違いで空の見え方まで変わるとは面白いですね。


到着直後、ホテルのバーで。太田君、実は、部屋に戻って寝たかったんじゃ・・・・(中島)

異文化交流の楽しさや英語の重要性、そしてアミロイドという分野の奥深さを知ることができた充実した5日間でした。笑顔で交流してくれたTUMの学生さん方、アミロイドの楽しさを教えてくださった先生方、そして大変貴重な機会を与えてくださった後藤先生、ありがとうございました。