● 3次元FEM電磁場解析
● 3次元FEM電磁場解析
電磁場解析の対象は,金属薄膜に設けたサブμmオーダーの開孔構造です.この構造に光を当てて,膜の裏面に高輝度で,空間的な広がりが数十nm以下の極微小光源が生成される様子を解析します.この構造の応用例としては,走査型近接場光学顕微鏡の走査プローブの先端部分が挙げられます.
2開孔構造内部には,照射した光の電磁場により励起された自由電子の疎密波であるところの表面プラズモンポラリトン(SPP)波が,2開孔間の隔壁に集中して伝搬します.膜の裏面,すなわち開孔の出口では,左図の左下図のように,開孔を伝搬してきたプラズモン波が合体し,非常に集中した電磁場が形成されます.
本研究では,3次元有限要素解析(3D-FEM)に基づく電磁場解析により,2開孔構造のプラズモン伝搬を解析しながら,実験では,集束イオンビーム加工(FIB)装置を用いて実際に2開孔構造を製作し,シミュレーションの予測通りの電磁場が創成されるかどうか調べてゆきます.
例えば銀薄膜の場合,左図に示す様に光の可視光の電磁場に対して虚部が大きな複素屈折率を有しています.このことは複素誘電率(=複素屈折率の2乗)の虚部が負号で非常に大きな値をとることを意味し,光電界と逆方向の強い分極の生成が元となり,SPP波を発生します.
FEM解析では,解析する2開孔構造を左図の様に立体的に細かな四面体要素で細分し,各接点に対してマクスウェル方程式に基づく電磁場方程式を構築し,連立方程式を構成して解くことにより電磁場の振る舞いを明らかにします.
解析結果から,左図の様に,2開孔を隔てている隔壁周りに,非常に強いSPP波が形成され,伝搬し,膜の裏面まで到達することが分かります.2開孔の中は,光導波路の一種ですから,左図右上の様な光の伝搬モードも発生可能ですが,減衰が激しいため問題になりません.
2開孔の隔壁部分に集中して伝搬する電磁波は,左図に示す様な電界や磁界の振動によって伝搬します.
2開孔構造の伝搬モードは,モード解析よりおよそ左図の4パターンが見つかりました.しかし隔壁部分に集中して伝搬するモード以外は,減衰量が激しかったり,励起される強さ自体が弱いため,問題となりません.また,隔壁厚さに強く依存して伝搬波長や減衰長が変化することが分かりました.
COMSOL Multiphysics, RF moduleはスウェーデンCOMSOL社のシミュレーションソフト(前身はFEMLAB),オプションパッケージです.